署名の呼びかけ人

【2017年5月末時点で、約9000人の方々に賛同いただきました。多くの皆様の本署名へのご協力、本当にありがとうございました。本署名運動は2017年5月31日を以って終了いたしました。】(2017年5月31日)


青井 未帆(学習院大学教授・憲法学)・池内 了(名古屋大学名誉教授・宇宙物理学)・井野 博満(東京大学名誉教授・金属材料学)・鵜飼 哲(一橋大学教員、フランス文学・思想専攻)・梅原 利夫(和光大学教授・教育学)・大石 芳野(フォトジャーナリスト・世界平和アピール七人委員会委員)・香山 リカ(立教大学教授・精神科医)・川嶋 みどり(日本赤十字看護大学名誉教授・看護学)・古賀 茂明(元経済産業省官僚、フォーラム4代表)・小沼 通二(慶應義塾大学名誉教授・物理学)・佐藤 学(学習院大学教授・教育学)・島薗 進(上智大学教授・宗教学)・諏訪原 健(筑波大学大学院生)・高橋 哲哉(東京大学教授・哲学)・高原 孝生(明治学院大学教授・国際政治学)・中野 晃一(上智大学教授・政治学)・西川 純子(獨協大学名誉教授・経済学)・西谷 修(立教大学教授・比較文明学)・西山 勝夫(滋賀医科大学名誉教授・医学)・野田 隆三郎(岡山大学名誉教授・数学)

防衛装備庁に「安全保障技術研究推進制度」の廃止を要請するとともに、全国の大学・研究機関に本制度に応募することのないよう求める要望書に対する多数の方々のご賛同、ありがとうございました。本署名は、WEB署名と署名用紙による署名の両方で行い、2017年3月5日に第一次集約を行いました(賛同者6767名、賛同団体36団体)。

防衛装備庁への要請書、
および全国の大学・研究機関への要請書

 安倍内閣は2017年度予算案の中で、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に110億円を計上しました。これは軍事研究のための競争的資金制度で、その狙いは、防衛装備(兵器・武器)の開発・高度化のために、大学・研究機関が持つ先端科学技術を発掘し活用することです。2015年度3億円の予算で始まり、2016年度6億円と倍増した予算が、一気に110億円に激増することは極めて異常です。


 この制度について、防衛装備庁は①基礎研究に対する助成、②研究成果の公開を原則とする、③デュアルユース技術の研究で民生技術への波及効果がある、の3点をあげ、軍事研究に対する科学者や市民の警戒心を和らげようと躍起になっています。しかしこれは次にみるように欺瞞的です。

 ① 防衛装備庁の「基礎研究」は、防衛装備(兵器・武器)の開発・高度化を目指す一連の研究・開発の第一歩です。「学術的な知識や、製品や利益に直接結びつかない技術と理論の発見に関する研究」と定義される本来の基礎研究とは全く異なるものです。

 ② 公募要領には「研究成果は公開が原則」と記されていますが、原則と書くのはそうでない場合があるからです。また成果の公開に際しては防衛装備庁の確認が不可欠です。さらに研究の進展状況は防衛装備庁の担当職員により管理され、研究の進め方も干渉を受けます。本制度では、研究成果の公開や学問の自由といった、学術にとっての死活条件は保証されていません。

 ③ 「デュアルユース」という言葉は、民生技術を軍事研究に用いるための甘い言葉です。研究成果は軍事に独占され、軍事に支障がない範囲で民生目的に使用してもかまわないとなるでしょう。


 一挙に110億円となった背景に、昨年夏に決まった「防衛技術戦略」があります。20年後を見越し、アメリカと一体となって武器の無人化やスマート化(人工知能)を図るものです。それは秘密研究となる可能性が高く、その成果としての武器は世界に輸出されます。これまで武器と関わることなく民生研究で発展してきた日本の科学・技術が、「軍産学複合体」に組み込まれていきます。科学は人類全体が平和的かつ持続的に発展するための営みではなくなり、次世代の社会を担う若者を育てる高等教育の在り方をも変質させてしまいます。

 私たちは、戦時中に科学者が軍に協力したことの痛切な反省をもとに、「軍事研究を行わない」と誓った戦後の学術の原点に立ち帰って、を防衛装備庁に要請すると共に、を各大学・研究機関に要望します。



  1. 防衛装備庁は「安全保障技術研究推進制度」を廃止する

  2. 各大学・研究機関は「安全保障技術研究推進制度」への応募を行わない

  3. 各大学・研究機関は軍事的研究資金の受け入れを禁止する規範や指針の策定、平和宣言の制定を検討する