防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」の2019年度の採択結果を公表

 防衛装備庁は2019年8月30日に、「安全保障技術研究推進制度の令和元年度採択研究課題及び2次募集の実施について」という文書を公表しました。

 今年度は、57件の応募に対して16件が採択されました(大規模研究課題:3件、小規模研究課題:13件) 。 また国立研究機関も多く採択されています。特に物質・材料研究機構から5件も採択されています。 応募件数は、2018年度の73件から大幅に減少し、 制度開始から初めて2次募集を実施します。 応募・採択状況が思わしくないという判断なのでしょうか。

 新たに採択された16件について、所属機関別内訳は
・大規模研究課題 研究代表者所属機関:企業等3社/分担研究機関:大学1校(大学名不明)、企業等5社
・小規模研究課題 研究代表者所属機関:大学2校(大阪市立大、山口大)公的研究機関7機関、企業等4社/分担研究機関:公的研究機関1機関、企業等3社。

 上述したように、大学で採択されたのは、大阪市立大学、山口大学ともう1大学(大学名は不明)の3大学です。

 大阪市立大学は小規模タイプAです。《化学物質検知技術に関する基礎研究》として「拡張された細孔を持つ配位高分子を利用した有機リン化合物の検出」が採択されています。これは「有機リン化合物の検出に適した材料を選定し、この材料が有機リン化合物に暴露した際に生じる変化について、3つの異なる分光学的手法を用いて調べることにより、残留農薬を検出する新しいツールとなり得るか検証する」とされています。毒ガスなど化学兵器の検出に活用しうる技術です。

 山口大学は小規模タイプCです。《生物模倣による効率的な移動体に関する基礎研究》として「細胞が持つやわらかい車輪の回転メカニズム解明と移動体への応用」が採択されています。「最近発見されたアメーバ細胞内部の車輪様構造の回転運動を解析し、これを模倣したソフトロボットのプロトタイプを製作して実証することにより、やわらかい車輪様構造を持つ生物の模倣に関する基礎研究を行います」と書かれています。生物を模倣したロボット兵器などにいつ用化される可能性があります。

 なお同じ応募項目で物質・材料研究機構の「昆虫の脚の接着機構の基礎研究と移動体への実装」も採択されています。「昆虫が壁の上や水中でも歩行できる原理や脚の構造を解明することにより、環境の変化に関係なく安定して物質の表面を移動したり、留まったりすることができる移動体の実現」を目ざしています。防衛装備庁がこのような研究を必要としていることがうかがわれます。

 今後、採択の内容については 軍学共同反対連絡会としても分析し、大阪市立大学、山口大学に対する抗議などの対応も行っていきます。【軍学共同反対連絡会事務局】