「戦争する国づくり」を絶対に許さない決意と声明
― 憲法九条改悪反対、沖縄新基地建設阻止、軍学共同ストップ、核廃絶、原発推進政策転換を求め、科学者の社会的責任を果たすー
自由民主党は7月の参院選の争点に「憲法改正」を位置づけ、全国都道府県連に取り組みの強化を指示しました。自民党は昨年3月の党大会で、改憲案4項目を決定、特に九条の条文を維持したまま、第3項に「自衛隊」を明記する案を発表しました。安倍首相は「自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」と説明しています。「自衛隊」明記のねらいは、九条2項を実質的に死文化し、日本が米国の戦争に追随して世界中どこへでも出かけて戦争することを可能とします。また、制度としての軍が確立すれば、軍事費が増加するのは必至です。
一方、幼児教育と高等教育の無償化・給付型奨学金制度を実行する財源として消費税値上げを予定されています。教育を人質にした消費税の引き上げを認めることはできません。軍事費の膨張と教育・社会福祉の切り下げは一体のものであることは、戦前の経験が教えるところです。
私たちは、科学を平和と福祉の向上、民主主義の発展に役立てることを会則に定めた日本科学者会議の一員として、憲法九条改悪に反対し、憲法に則り、全ての国民が平等に教育を受ける権利を保障するよう、強く求めます。
都市の中心部にあって世界一危険と称される沖縄・普天間基地の危険性除去を口実として、名護市辺野古地区に新たに米軍基地の建設が強行されています。翁長前知事の遺志を引き継いだオール沖縄推薦の玉城デニー氏の勝利に続き、今年2月に行われた「辺野古基地の是非」を問う県民投票では72.15%の反対票が投じられ、更に4月の衆院補選でも辺野古基地反対のオール沖縄統一候補が自民党候補に圧勝しました。しかしながら、安倍政権は沖縄の民意を無視し続け、辺野古基地建設を強行しています。一方、沖縄の若者は、自らが対話による相互理解で問題の解決を図る道を模索し、県も政府に対して対話による解決を強く求めています。
私たちは、沖縄県民の要求を支持し、政府に対し対話による解決と、沖縄新基地建設即時中止、そして緊急の課題として日米地位協定の見直しを求めます。
2015年に創設された防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」は、「デュアルユース」をキーワードに、大学・研究機関や民間企業に軍事技術の基礎となる研究を委託する制度で、初年度の3億円から増加し続け、今年度も3年連続で100億円を突破しました。日本学術会議は、2017年3月に「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表、「軍事研究は行わない」とした過去2回の声明を継承し、軍事研究への関与を強く戒めました。埼玉支部では、いち早く軍学共同反対連絡会に参加し、2015年から県内の大学や研究所に対して軍学共同研究へ参画しないよう訴えるビラ宣伝行動や、「平和のための埼玉戦争展」で市民に直接伝えたり、県内の学者・研究者と懇談・情報交換などを行ってきました。県内では、埼玉大学HPに外部資金公募情報として文科省・経産省・厚労省資金と並んで同制度が掲載され、さらに理化学研究所(和光市)と東京電機大学(鳩山町)が本制度に採用されていることは看過できません。
私たちは、日本学術会議の新声明を支持し、日本の科学者の誓いを改めて肝に銘じ、科学の軍事利用と、軍産官学共同に反対します。
2017年7月、国連において長年の世界の願いであった「核兵器禁止条約」が122か国の賛成で採択されました。今年1月現在で70カ国が調印、国内でも政府の署名・批准を求める決議が357自治体であげられています。しかしながら日本政府は、アメリカの核の傘に固執して本条約に反対し、未だ批准もしていません。政府が核の傘に固執する口実とする北朝鮮を含む北東アジアの情勢も米朝対話により大きく変化しようとしており、核兵器を力の均衡の手段とする政策は時代遅れとなっています。
私たちは、日本政府が核兵器禁止条約を速やかに批准・署名して、世界各国と共に核兵器の廃絶に向けて積極的な役割を果たすよう、強く求めます。
併せて、福島原発事故が未だに収束していないにもかかわらず、政府と電力会社は原発再稼働に邁進しています。世界の趨勢が原発から自然エネルギーにシフトし、政府・財界の原発輸出政策が破たんしているにもかかわらず、原発をベースロード電源とする安倍内閣のエネルギー政策は国民の要求や世界の趨勢からかけ離れたものと言わざるをえません。
私たちは、原発が核廃棄物の処理を含めて未完成技術であることを確認し、一旦事故が起きれば重大な被害をもたらすことを経験しました。私たちは、政府や自治体に対して、原発被害に苦しむ福島県民の生業を復活するための保障と援助を継続するとともに、核兵器開発につながり、現在の先端科学の力をもってしても究極の未完の技術である原発を速やかに廃止し、自然エネルギーへの転換を図ることを求めます。
2019年6月8日
日本科学者会議埼玉支部 第46回支部大会