【「経済安保法案に異議ありキャンペーン」声明】政府与党による経済安保法案の内閣委員会採決に抗議する

1 はじめに
 政府与党は、4月6日の衆議院内閣委員会において、岸田政権の提案する重要法案である経済安保法案について、立憲民主党の提案していた「自由かつ公正な経済活動を維持する」という観点からの当然の修正を拒否し、原案を採決した。原案に反対したのは、わずか2人の委員(共産、れいわ)のみであった。法案は明日7日の本会議で審議・採決される。

2 法案の数々の問題点
(1)立憲民主党の提案した修正案は、経済安全保障の「基本理念」を新設し、国家及び国民の安全の確保と自由かつ公正な経済活動の促進との両立、必要性最小限の規制、事業者の自主性の尊重、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行義務等を盛り込むべきとするものであったが、これらの当然ともいえる基本理念が盛り込まれないまま、採決が強行された。付帯決議においても「自由かつ公正な経済活動の促進との両立」はふれられているが、「新たな国際経済秩序の形成の促進の重要性に留意」という多義的な内容が加筆されており、「必要最小限」の文言は盛り込まれなかった。

(2)法律の施行状況の国会への報告を定める立憲民主党の提案した修正条項は、今後も施策の民主的チェックのために必要不可欠な規制であったが、このような当然の修正も受け容れられなかった。付帯決議に、施行状況を「国会を含め、国民に公表すること」が盛り込まれたが、公表すべき事項も明確にされておらず、実効性は疑わしい。

(3)法案の制定により、経済活動が軍事・安全保障目的に従属することとなり、官民の対等な関係が主従関係に転化される。また、法案そのものが、国家安全保障を名目として、多くの事項を政省令などに委任しているため、規制内容そのものが明確でない。

(4)企業活動に伴う企業秘密が厳密に定義されず、無限定に拡大する危険性がある。また、秘密漏洩に対する罰則が強化される。

(5)先端的な重要技術の開発支援のため、官民伴走支援のための協議会の設置と調査研究業務の委託と守秘義務を求めるとされている。これは、アメリカの軍事技術開発機関であるDARPA(国防高等研究計画局)のような機関の設立にもつながる重大な提案である。官民協力による秘密の軍事技術の大規模な開発につながる提案であり、科学者や技術者、企業までをも軍事研究に囲い込むもので、学術研究体制に歪みをもたらすことになる。また、ユネスコの科学及び科学研究者に関する勧告で認められている、軍民両用技術の開発における「研究を離脱する権利と責任」「意見表明と報告の権利と責任」を無効なものとしてしまう危険性がある。
 特定重要技術の定義もあいまいのまま、先端科学技術開発にシフトした国費による委託事業は他の分野や基盤的研究費の減額を引き起こすばかりでなく、研究の多様な展開を阻害し、さらなる研究力の低下を引き起こす危険性がある。

(6)安全保障上機微な発明というあいまいな要件で、特許出願の非公開に関する制度を創設するとしているが、このような制度によって発明者の特許権が侵害される。法案は一応その補償の仕組みを提案しているが、その実効性には疑問がある。付帯決議では、「国費による委託事業の成果である技術や、防衛等の用途で開発された技術、あるいは出願人自身が了解している場合などを念頭に、支障が少ないケースに限定する」としているが、法文上の限定となっておらず、実効性は疑わしい。

3 衆院本会議と参院による徹底審議と政府原案の抜本的な見直しを求める
 法案は、7日には衆院本会議で審議される。さらなる徹底審議を求め、我々の指摘する問題点が払しょくされるような抜本的見直しを求める。
 立憲民主党は、同党の提案した修正案の内容の一部が付帯決議に取り入れられたことなどを理由に、法案の修正案が否決されたにもかかわらず、内閣委員会において原案賛成の態度をとった。自由経済と自由貿易、特許公開など国の根幹にかかわる原則を、安全保障を理由に、政令以下の下位法規に大幅に委任して改変してしまう本法案の構造には根本的な疑問がある。
 その問題点を指摘し、修正案を提起しながら、法文レベルにおける規制が功を奏しなかったにもかかわらず、原案に賛成してしまうという態度は責任ある野党の態度と言えるか大いに疑問である。同党は参議院の段階において、法案の徹底審議により原案の抜本的修正に努力すべきである。
 
  2022年4月6日       経済安保法案に異議ありキャンペーン