【事務局長声明】軍学共同をすすめる安全保障技術研究推進制度に大学は応募しないことを強く要請する

2024年 4 月 18 日 軍学共同反対連絡会 事務局長

 

 防衛装備庁による安全保障技術研究推進制度の公募が2月8日 に始まり、 5月14日 に締め切られます。日本学術会議は、「 研究資金の出所が軍事関連機関である研究」は「軍事的安全保障研究」(いわゆる軍事研究) としています。さらに この 安全保障技術研究推進制度 は 「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」 と指摘しています。 (日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」及び「報告 軍事的安全保障研究について」 2017 年)
 この日本学術会議声明を真摯に受け止め、多くの大学は応募しないことを表明し、 2022 年度まで大学からの応募は年 10 件程度でした。しかし昨年度は大学から 23 件の応募があり、北海道大学(大規模研究)、熊本大学(大規模と小規模 2 件)、北見工業大学(小規模)、大阪公立大学(小規模)が採択されました。
 私たち連絡会 は、 この 4 大学に応募理由を問う公開質問状を出しました。それに対し 、「『軍事的安全保障研究に関する声明』を尊重する」(北大)、「『軍事目的のための科学研究は行わない』とする声明は遵守すべき」(熊大)、「日本学術会議の1950年及び1967年の『戦争を目的とする科学の研究は行わない』とする趣旨の声明に賛同する」(大阪公立大)と言いつつも、「軍事利用に限定した研究は実施しない」(北大、熊大)「『攻撃的な目的のためにも使用されうる技術研究』については申請を不可」(北見工大)と記すことで応募したことを正当化しています。そして安全保障技術研究推進制度による研究が民生的に意義があれば軍事限定とはならないとして、同制度の利用を認め、また研究成果が軍事利用されることを容認しました。これは日本学術会議声明が「研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる」と示していることとは異なるものです。
 防衛装備庁は、「防衛技術指針2023」で「安全保障技術研究推進制度」を第一段とし、その上に「先進技術の橋渡し研究」の第二段があり、第三段に「特別研究」、第四段「研究試作」、第五段「開発」、そして最後に「装備化(実用化)」とし、この全体を「ゲーム・チェンジャーの早期実用化に資する取組」と位置付けています。安全保障技術研究推進制度は装備化に至るまでの重要な最初のステップであり、軍事研究に他なりません。
 安保技術研究推進制度は民生的利用ができる研究であっても、防衛費を用い、軍事研究の一端を担うものであり、「『軍事目的のための科学研究は行わない』ことと矛盾しており、大学を人々を欺くものに変質させるものです。この間、大学への運営費交付金が減額 され 科学研究費も据え置かれる中で、 研究費が逼迫 しています。 他方 、 軍事研究予算は 大幅に増 えています。研究費不足を梃子に 大学や研究者を軍事研究に取り込もうとする政府の意図は明白です。
 2022年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」では、「技術力」を総合的防衛力の柱に据え、「成果を安全保障分野において積極的に活用するため、広くアカデミアを含む最先端の研究者の参画促進等に取り組む」としています。大学の研究者を軍事研究に動員しようと政府は狡猾に狙っているとみることができます。さらに今国会で審議中の「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」が制定されれば、安全保障技術研究推進制度による研究においても、研究者の身元調査セキュリティ・クリアランス)や、研究交流や研究成果公表など学問の自由の制限がなされないという保証はありません。
 私たちは、平和と人類の幸福のために研究し、軍事研究は行わないという大学の理念を堅持し、研究の自律性と公開性を将来にわたって確保し、研究者の人権を守るためにも、大学として応募しないよう強く要請します。