新たな日本学術会議法の成立・施行に強く抗議し、新法の廃止ならびに旧法の復活を求めます

2025年7月11日

軍学共同反対連絡会共同代表 赤井 純治 大野 義一朗 多羅尾 光徳

 日本学術会議を特殊法人化する新たな「日本学術会議法」が、6 月11日に成立しました。この法律は、日本学術会議の独立性と自律性を脅かし、「学問の自由」を侵害し、ひいては日本における軍学共同を加速させるものです。私たち軍学共同反対連絡会は、特に軍学共同に強く反対する立場から、科学者の戦争への協力の反省から生まれた旧日本学術会議法の精神とは正反対の法律が、国会で十分な審議が尽くされたとは言えない状況で可決・成立し、施行されたことに対し、強く抗議します。
 私たちはかねてより、日本学術会議が特殊法人化されることによって、①総理大臣任命の監事、総理大臣任命の委員による評価委員会という新たな介入の仕組みが作られること、②中期的活動方針や年度計画の作成が義務づけられることにより、日本学術会議が、予算を梃子に政府の意に沿う活動をさせられること、③会員の選考助言委員会の新設によって会員選考に政権や財界の意向が反映されるなど、日本学術会議の独立性や自律性が脅かされ、「学問の自由」が侵害されるという問題点を明らかにし、強く警鐘を鳴らしてきました。日本学術会議自身も、ナショナルアカデミーとして組織が満たすべき5つの要件(①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性)を示すとともに、日本学術会議法案に対し、繰り返し懸念を表明してきました。
 さらに、旧日本学術会議法の前文から「平和」の文言が削除されたことに端的に示されるように、政権が軍学共同を推し進める狙いがあることも我々は明らかにしてきました。
 国会審議では、日本学術会議の独立性と自律性を巡る懸念は払拭されませんでした。それどころか、5月9日の衆議院内閣委員会での審議において、坂井学内閣府担当相は三木圭恵議員(日本維新の会)への答弁の中で、「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」とまで述べました。日本学術会議会員に対する思想選別が行われうることを示した暴言であり、看過することはできず、この点に強く抗議をし、発言の撤回を求めます。
 そもそも、2020 年10月の菅義偉政権下での日本学術会議会員候補任命拒否の過ちを撤回していない政権に、日本学術会議のあり方を転換しようと企てる資格はありませんでした。さらに、今回の坂井大臣の発言は、この 2020 年の違法な任命拒否の本音を露呈したものでもあり、二重に許し難いものす。
 私たちは、新たな日本学術会議法を廃止し、旧・日本学術会議法を復活することを求めます。併せて、石破首相が 2020年に任命拒否された6名の研究者を日本学術会議会員として直ちに任命すること
を求めます。6名の会員候補の任期は 2026年9月末日までの残り1年余りとなっており、もはや一日たりとも後回しにすることはできません。
 日本学術会議の特殊法人化と軌を一にするかのように、神戸大学のようにこれまで「安全保障技術研究推進制度」への応募を控えてきた大学で応募を認める動きが出てきています。6月12日には、防衛省内に「防衛科学技術委員会」が設置され、軍学共同のさらなる推進が狙われています。このような状況に鑑みると 、 日本学術会議が2017年に発出した「軍事的安全保障研究に関する声明」の重要性がますます高まっています。学術会議の声明は、オープンな場で議論を尽くした、政府から独立した学術界の見識として、全ての大学、研究所等で、今後も尊重されるべきものです。私たちは、日本学術会議の特殊法人化だけでなく、軍学共同に対し、これからも反対の声を上げ続けていきます。