「『平和安全法制』(戦争法)に反対する滋賀県立大学有志の会」が見解を発表(2017年3月31日)

滋賀県立大学は今年1月、人類の平和を脅かす研究をしないことを記した「研究活動における基本理念」を制定していましたが、3月22日には、研究者の社会的責任を列挙した「行動規範」と、公募制度に申し込む際に戦争や軍事への寄与を目的としないことを確認する「可否判断基準」を公表し、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に今後、大学として応募しないとする学長談話を発表しました。これを受けて、「『平和安全法制』(戦争法)に反対する滋賀県立大学有志の会」は、以下のような見解発表しました。なお、この見解は会のWebサイトでも公開されています。
 

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 見解の発表にあたって
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「平和安全法制」(戦争法)に反対する滋賀県立大学有志の会(以下「当会」)は、2015年5月14日の「平和安全法制」(戦争法案)閣議決定と、同年7月16日の衆議院本会議での同法案強行採決を受けて、同年8月15日、滋賀県立大学有志の呼びかけにより発表した「『平和安全法制』(戦争法案)の撤回と廃案を求める声明」への賛同者の集まりです。呼びかけ人20人を含め、賛同者は171人になりました。

同じ2015年度は、防衛省による「安全保障技術研究推進制度」の初年度でしたが、京都新聞で既報の通り、滋賀県立大学においても応募が検討されました。幸い、教育研究評議会で応募の是非について審議に付され、反対意見を述べた委員も多かったことから、応募は見送った上で、このような応募の可否を判断する拠り所となる、理念、行動規範、実施上のガイドライン等を整備することになりました。

今年1月に公表された「滋賀県立大学の研究者の研究活動における基本理念」、さらに3月22日付けで公表された「滋賀県立大学の研究者の研究活動における行動規範」、「本学の研究理念等に抵触する可能性がある公募制度への応募等における可否判断基準および手続き」は、2015年度当初以来、2年近くの学内の議論の末にようやく公表されたものです。

当会では、防衛省の「安全保障技術研究推進制度」に象徴される軍学共同の推進は、戦争法の制定や武器輸出三原則の撤廃と地続きの問題であり、学術界における「戦争法」問題であると捉え、軍学共同反対連絡会などを通じて関連する全国の動きについて情報を収集するとともに、学内在職者を中心に、それらの情報や問題の所在を知らせ、意見提出を呼びかけるなどの取組を行ってきました。

3月22日に、「行動規範」「可否判断基準」が公表され、「学長談話」が発表されたことを受け、この間の取組を踏まえて、次のとおり見解を発表します。

2017年3月31日
「平和安全法制」(戦争法)に反対する滋賀県立大学有志の会

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「基本理念」「行動規範」「可否判断基準」の公表および学長談話についての見解
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 滋賀県立大学は、2017年3月22日、1月に公表した「滋賀県立大学の研究者の研究活動における基本理念」(以下、「基本理念」)に加え、「滋賀県立大学の研究者の研究活動における行動規範」(以下、「行動規範」)および「本学の研究理念等に抵触する可能性がある公募制度への応募等における可否判断基準および手続き」(以下、「可否判断基準」)を公表するとともに、これに関する学長談話を発表しました。

 「基本理念」では、「戦争や軍事への寄与を目的とするなどの人類の平和を脅かす研究」は行わないとし、「可否判断基準」でも、公募制度や研究の目的が「戦争や軍事への寄与を目的とするものでないなど本学の研究理念等に反しないこと」を確認するとしています。大学として軍事目的の研究に関わらないことを理念として定め、その理念に抵触する研究が行われないようにするための基準と手続きが定められたことは、高く評価できます。

 私たちは、この間の学内の議論において、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度(以下、「防衛省制度」)など、軍関係機関の資金提供による研究は、研究内容如何にかかわらず「戦争や軍事への寄与を目的とする」から認められないとする明確な規定を「可否判断基準」に盛り込むべきことを求めてきました。しかし、この度公表された「可否判断基準」に、その明確な規定は盛り込まれませんでした。一方、同時に発表された学長談話により「基本理念」「行動規範」「可否判断基準」に照らして、「防衛装備庁の『安全保障技術研究推進制度』を利用した研究は本学にふさわしくなく、大学としての応募はできないものと考え」るとの方針が学外に公表されたことには意味があり、評価します。

しかし、米軍資金による研究や軍需産業との共同研究なども含む、軍関係機関の資金提供による研究全てに明確に歯止めをかけてこそ、「戦争や軍事への寄与を目的とするなどの人類の平和を脅かす研究」は行わないとした「基本理念」は実効性のあるものになります。この点は課題として残りました。

 去る3月24日、日本学術会議の幹事会は、安全保障と学術に関する検討委員会がまとめた「軍事的安全保障研究に関する声明(案)」をほぼ原案通り採択し決定しました。新声明では、大学や研究機関に対し、次のことを求めています。

大学等の各研究機関は、施設・情報・知的財産等の管理責任を有し、国内外に開かれた自由な研究・教育環境を維持する責任を負うことから、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである。

 滋賀県立大学が、この求めに対応する制度を他大学に先駆けて整備したことは評価しますが、先述のように課題も残っています。現時点で、当会が今後の検討課題と考える内容を別紙に示しましたので、学内外の諸賢のご意見をいただけましたら幸いです。

最後に、3月22日の公表と学長談話が、学内では告知されず新聞報道を通じて初めて知るということに象徴されるように、その間、学内の合意形成や意志疎通に多くの問題があったことを指摘したいと思います。今後、制度の運用にあたり、また残された課題を検討していくにあたり、透明で民主的な大学運営のもと、学内外への充分な説明責任を果たすことがますます重要になります。当会としても、そのことを大学に求めていく取り組みを、今後も行っていきます。

2017年3月31日

「平和安全法制」(戦争法)に反対する滋賀県立大学有志の会