「軍事的安全保障研究」に対する日本社会医学会の姿勢(2017年8月19日)

日本社会医学会は、第56回総会(2015年7月)において、「戦争は人命を傷つけ奪うこと自体を目標としている点で、また戦争の最大の被害者は女性、子供、障害者、老人など常に一般市民である点で、戦争は最大で最悪の社会的健康阻害要因」との認識の基に、戦争法案に反対する特別決議を満場一致で採択した。以後、医学・医療や科学と戦争との関わりを学会としての検討課題に据え、議論を重ねている。

一方、社会的状況を見ると大学等の研究予算が年々削減される中で防衛省安全保障技術研究推進制度事業費は大幅に増額し、「軍事的安全保障研究」の拡大を謀る流れが形成されつつある。こうした事態に、日本学術会議が「軍事的安全保障研究に関する声明」を発し、「軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある」とし、「研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断」を求めている。

日本学術会議は1949年に創設され、1950年に「戦争を目的とする研究は絶対に行わない」旨を声明し、1967年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発している。「科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念」を背景に、日本学術会議が表明した「軍事的安全保障研究に関する声明」を、日本社会医学界としても重く受け止める。

日本社会医学会は、①軍事目的の研究は絶対に行わない、②国内外の軍事目的の研究費を使用した論文を本学会誌・社会医学研究に掲載しない。

2017年8月19日

第58回日本社会医学会総会