「東海大学が軍事研究に関わることに反対する会」の東海大学学長への要望書

2018年4月10日

東海大学学長 山田 清志 様

団体名 東海大学が軍事研究に関わることに反対する会

代表者 永山 茂樹

防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」による資金受け入れについて再考を

 昨年12月22日付の防衛省プレスリリース、及び23日付の毎日新聞の報道等により、東海大学が数少ない(4大学)分担研究機関として採択されたことを知りました。

 多くの学部を持つ当大学にあって、工学部の一教員のこととはいえども、この研究助成制度に採択された研究課題の分担者となることは、間接的ではありますが防衛装備庁から東海大学が研究委託されることとみなされます。

 従いまして私共、他学部や退職後の教員、卒業生や地域住民も無関心ではいられません。そこで次の理由から、同制度による研究助成の受入を再考されることを強く要望致します。

再考を要望する理由

1)昨年3月24日に日本学術会議が発表した声明「軍事的安全保障研究に関する声明」では以下のように同制度の問題点を指摘しております。

防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015年度発足)では、将来の曾比開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家ではなく、同庁内部の職員が研究の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。”

そして、日本学術会議は同声明において以下のような提言を行っております。

各研究機関は、“軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を、目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的、倫理的に審査する制度を設けるべきである”

2)既に多くの主要大学が、同制度への所属教員の応募および研究分担を認めない、という趣旨の声明を発表しております。

3)科学技術が、扱い方を間違えれば人類を破滅に導くほどの力を持つに至ったことをいち早く認識し、思想を培う教育、文理融合の教育を目指した先達は創立者・松前重義先生でありました。同制度の研究資金を東海大学が受け入れることは、この松前重義先生が打ち立てた建学の精神に反することになるのではないでしょうか。

4)分野によっては研究方法が高度化し、研究を進めるためには高額の機材などが必要な時代です。その一方で、研究者、特に若手の研究者は迅速な研究成果を求められる立場にあります。そこで彼らにとって、大型研究費の誘惑は大きいものであることは理解できます。しかしながら、日本学術会議の声明にも書かれてありますとおり、大学における研究は“研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保され”なければなりません。

5)多くの学部を擁した東海大学は、地元に卒業生や在学生、教職員が多く在住し、地元の自治体と連携するなど、地域の学術・文化の中核の役割をこれまで果たしてきました。その立場においては、平和憲法の下で、国民・地域住民の要望に応えた学術・文化の一層の向上のために、権力に屈することなく自律的な研究・教育を推進することが責務であると考えます。今回の安全保障技術研究推進制度の受入は、東海大学がこれまで培ってきた社会や地域との信頼関係を損なう恐れがありはしないでしょうか。

要望する事項

1)すでに研究委託が決定している研究課題「極超音速飛行に向けた、流体・燃焼の基礎的研究」(代表研究機関:宇宙航空研究開発機構、分担研究機関:東海大学・岡山大学)につきましては、現段階において、以下の措置を講じていただきたい。

研究分担者の山田剛治氏(東海大学工学部機械工学科)を担当する防衛装備庁のプログラム・オフィサー(PO)および主研究委託組織である宇宙航空研究開発機構と連絡を取っていただき、研究の自主性・自律性、特に成果公開の自由について文書にて確約を取っていただくこと。

2)東海大学教員が、外部組織から研究委託を受ける場合、それが軍事研究か、あるいは軍事研究につながる恐れがないかどうかを審査し、受諾を許認可する権限を有する倫理委員会を設置していただきたい。日本学術会議が現在、新会長のもとで軍事研究に関する新たなガイドラインや倫理規定の策定作業を行っているとの報道がありますので、その結果を踏まえることは重要ですが、建学の精神に則った独自の倫理規定を設けていただきたい。

以上

本要請書への賛同人

①呼びかけ人

代表  東海大学法科大学院教授  永山 茂樹

事務局 東海大学名誉教授(植物学、環境科学)  佐々木 園子

    東海大学名誉教授(数学)  根本 精司

    東海大学名誉教授  近藤 正三

    東海大学名誉教授(体育学)  水田 嘉美

    東海大学名誉教授(ロシア政治)  宮崎 英隆

    元東海大学非常勤講師(化学、環境科学)  秋山 健夫

    中央大学名誉教授(農業経済学)  大須 真治

    横浜国立大・大妻女子大名誉教授(農業経済学)  田代 洋一

    元東京女子大学教員(生物学)  矢沢 静江

    元川崎公害裁判を支援する会事務局長  鈴木 久夫

    元高校教師(憲法、政治思想史)  武 真幸

    医学博士(公衆衛生学)  小林 勇

    短歌結社「かりん」会員、「秦野美術協会」会員  長友 くに

    松田町オンブズマン、元教員  日高 康弘

    団体職員(農民組合神奈川連合会)  藤代 哲雄

以上16名

②匿名賛同者

    東海大学教員 5名

    東海大学元教員 3名

    他大学元教員 1名

    地域住民 13名

合計22名