島根大学教職員組合の島根大学長に対する申入書(2017年4月21日)

2017年4月21日

国立大学法人島根大学長

服部 泰直 様

島根大学職員組合

中央執行委員長 富澤 芳亜 ㊞

申入書「軍事研究に対する島根大学としての対応を求めます」

島根大学職員組合は、これまで島根大学長に対して、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」を含む軍事技術研究を、島根大学として認めないことの明示を、申入書や団体交渉を通じて度々もとめてきました。これに対する島根大学の現執行部に回答は、日本学術会議の結論を待って態度を明らかにするというものでした。

 そのため職員組合では、島根大学としての対応を決定するためのロードマップの明示を求めましたが、島根大学の現執行部は、2017年2月8日の第二回団体交渉においても「最終的には時期を外すことなく学長理事で構成する執行部で協議し、最終は学長責任でとりまとめをする」としたうえで、具体的な時期の明示は拒否しました。

 一方、日本学術会議は3月24日に「軍事的安全保障研究に関する声明」を公表し、4月13日に報告「軍事的安全保障研究について」を公表しています。すでに声明が公表され三週間余を経ましたが、島根大学としての軍事研究への対応は何ら示されていません。

 そもそも日本学術会議は、これらの声明と報告で、大学等の研究機関における軍事研究が、軍事研究の持つ機密性などによって「学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあること」を確認しました。これは、日本国憲法第23条にも「学問の自由は、これを保障する」と明文化されている学問の自由が、現在まさに脅かされている危機感を示したものです。学問の発展にとって自主性や自律性そして研究成果の公開性が最も重要です。しかし防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」を含めた軍事研究では、それらは保障されていないのです。

 日本学術会議の声明と報告は、それを素直に読むならば、こうした危機感のもとで、大学において軍事研究をすべきでないとしています。また学問の自由とは、政府などの権力からの介入を防ぐという意味であり、大学には国内外に開かれた教育・研究環境を維持する責任を負うことも明示しています。何の対応もしなければ、島根大学は、日本学術会議のこうした危機感を共有することなく、学問の自由にすら背を向けようとする大学ととらえられかねません。

 その上で、島根大学が極めて問題の多いことを指摘された軍事研究に関する制度を利用するならば、なぜ可能なのか、開かれた研究や教育環境を維持できると判断した根拠は何かという説明責任を負うことになります。

 島根大学が、学問の自由と研究機関としての自主性をまもる立場にたつならば、これまでの交渉において執行部自身が縷々しめしてきたように、自律的に態度を明示すべき時期です。すでに島根大学としての自律的表明ととらえられる時期は外れようとしています。一刻も早い対応を求めます。