【緊急声明】菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、撤回を求める

2020年秋の日本学術会議会員の交代に当たって、菅義偉首相は、日本学術会議から推薦された105名の候補者のうち6名の会員任命を拒否した。この事態は、日本を代表する独立した学術機関である日本学術会議の意志を無視した政府からの人事介入と捉えざるを得ず、学問の自由を踏みにじる重大行為として強く抗議し、ただちに撤回するよう求める。

学術研究は、時の政府の意向とは独立した論理で進められるべきものであり、それを保証する大学の自治や学問の自由の根幹は、戦前の経験を想起するまでもなく、科学者の職務上の地位がいかなる状況においても尊重されるということにある。日本学術会議からの会員候補者推薦は、学問上の業績に則って行われたものであり、政府がその推薦に応じてそのまま任命することこそが、学問の自由を尊重することは言うまでもない。

しかるに、今回の日本学術会議会員の任命拒否は、1983年5月の国会においてなされた 「日本学術会議からの推薦者を任命権者である内閣総理大臣が任命・発令するのは形式的 行為である」との確認を政府が一方的に反故にしたものであり、日本学術会議の政府からの独立性(日本学術会議法第3条)をふみにじる違法なものである。任命を拒否されたの は、これまで政府に対して批判的な科学者が多いと伝えられており、時の政府が批判的な科学者を排除し日本学術会議を統制していくならば、政治の多様性のみならず、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにする」(日本国憲法前文)ための民主的歯止めも失われかねない。これまで営々として構築してきた日本の民主的システムを一 層蝕んでいくことになるのを強く危惧している。

私たち軍学共同反対連絡会は、戦前の日本の科学者たちが軍国主義政府に追随して侵略戦争に加担した歴史を反省して、科学者が軍事研究に手を染めることに反対する活動を続けてきた。その際に、日本学術会議が発した「軍事研究には絶対に従わない」との二度の決議と、それを継承する2017年の声明が大いなる導きとなってきた。今回の任命拒否には、 日本学術会議声明が大学における軍事研究を抑制している現状を変えようとする狙いも込められていると報じられており、その点でも私たちは断じて許すことはできない。

日本学術会議は、単に日本の学術を代表する機関であるにとどまらず、科学者に対して自らの学問的良心と科学者としての倫理を想起させるとともに、広く学問の在り方を点検するための重要な機関である。私たちは、日本学術会議が任命拒否に怯むことなく、また学問の論理を追求することを怠らず、これまで通り学術の独立性を保つ姿勢を毅然として持ち続けることを強く期待している。

2020年10月5日  軍学共同反対連絡会