昨年10月5日、私たちは、菅義偉首相による日本学術会議会員候補者6人の任命拒否は、日本学術会議の政府からの独立性(日本学術会議法第3条)と学問の自由を踏みにじる行為であり、また時の政府が批判的な科学者を排除し日本学術会議を統制していくことは日本の民主的システムを蝕むものであるとして抗議し撤回を求める声明を発した。その後1600を越える学術団体、市民団体、大学教職員組合などがそれぞれの立場で抗議声明を発し、日本学術会議自体も3度にわたる総会/幹事会声明を発した。しかし、菅政権はこれらすべてを黙殺してきた。
この任命拒否は、人事を通して日本学術会議を政府の意に沿うものに変えていこうとするものである。そして昨秋の自民党議員らの言動から、戦後三度にわたる日本学術会議声明が大学における軍事研究を抑制してきた現状を変えることが焦点の一つであることが明らかになっている。
さらに自民党内に設置されたプロジェクトチームは、日本学術会議を「政治や行政が抱える課題認識、時間軸等を共有し、実現可能な質の高い政策提言を行う」「独立した法人格を有する組織」に改組する提言を昨年12月に発した。それを受けて5月以降、菅首相を議長とする日本の科学技術政策の「司令塔」と化した総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員会合において、日本学術会議の在り方に関する政策討議が非公開で進められている。
だがそもそも日本学術会議は、学問が政治に従属し軍事に動員させられた歴史の反省に立って、憲法23条の「学問の自由」のもと学術が人類の平和と福祉に貢献すべきことを誓って設立された。だからこそ、その機能の普遍性ゆえに国の機関として位置づけ公財政で保証することとし、時の政府からの独立を法的に保障したものである。このように位置付けられた日本学術会議を密室の議論で改組する動きを許してはならない。
任命拒否を「済んだもの」として1年以上放置し、学術団体、市民団体、大学教職員組合などからの様々な立場の真摯な意見に全く答えず、さらに6人の理由開示請求にも「不開示」とするなど、違法状態を既成事実化する行政手法は許されるものではない。
菅政権の後継政権が任命拒否を撤回することを強く要求する。
あわせて、日本学術会議の在り方を変質させる企てを中止することを求める。
2021年10月1日 軍学共同反対連絡会
声明(2021年10月1日)