軍学共同反対連絡会幹事会声明「日本学術会議法改定の今国会での見送りにあたって」(2023年4月30日)

日本学術会議法改定の今国会での見送りにあたって
2023年4月30日 軍学共同反対連絡会 幹事会

 政府は4月20日、今国会での日本学術会議法の改定を見送りました。これは何よりも日本学術会議(以下、学術会議)が、ぶれずに毅然とした姿勢で政府に対応し、第187回総会では全会一致で、学術会議法上、最も強い意思表示である勧告「日本学術会議のあり方の見直しについて」(2023年4月18日)を採択した結果です。また、各学協会の声明、歴代の学術会議会長5名の連名による「根本的再考」を求めるアピール、日本のノーベル賞等受賞者8名の熟慮を求める声明、海外のノーベル賞受賞者61名連名による日本のノーベル賞等授賞者8名の声明への支持、海外アカデミーの代表者からの学術会議の独立性への支持、つまり学術会議の独立性を守るべきだとの内外のアカデミアからの強い支援があり、これに加えて市民の強い批判が続き、広範な世論が法案上程を見送りに追い込んだ結果と言えます。

 今回の改定問題の本質は、政府の機関である以上政府と問題意識や時間軸を共有すべきであるという考えに基づき、会員選考に政府・財界の意向を反映させることでした。それは政府などの権力から独立し、自律的に発展する学術がもたらす多様な見解により人類の福祉と平和に貢献するという学術のありかたを否定するものです。そのことは、上記勧告と共に学術会議総会が採択した国民へ向けての声明「『説明』ではなく『対話』を、『拙速な法改正』ではなく『開かれた協議の場』を」(2023年4月18日決定)に示されています。

 政府は今回の学術会議の断固たる見解を受け入れ、学術会議の独立性・自律性を奪う全ての企てを断念すべきです。そして岸田首相は、2020年の菅首相による6名の会員任命拒否を直ちに改め、6名の任命を行うべきです。それこそが学術界と政府との間の信頼関係を回復する道であり、その上で学術の発展のための協議の場を作るべきです。

 今、「安保3文書」を具体化する「防衛財源確保法案」や「防衛産業基盤強化法案」などの悪法が国会に付されています。学術会議法の改定の動きは、これらと一体の関係にあることは私たちの1月の緊急声明「軍学共同を一層推し進めることにつながる日本学術会議法改定の動きに反対します」(2023年1月30日)の中でも述べたところです。安保3文書には「安全保障分野における政府と企業・学術界との実践的な連携の強化を進める」など軍学共同の推進が明確に打ち出されており、そのために、軍事研究に一貫して反対してきた日本学術会議の存在が障害になっているからです。

 4月27日に学術会議会長はメッセージ「学術の発展とより良い役割発揮のために、広く関係者を交えた開かれた協議の場を」を発しました。私たちは、政府・財界のためではなく学術が反戦・平和と福祉に役立つことを願い、このメッセージを踏まえて、学術会議民営化を目指す動きに反対する取り組みを広げる決意です。