軍学共同・軍産学複合体づくりにNOといえる大学の自治と自由を(北海道,2016年9月26日)

北海道の大学・高専関係者有志のアピールの会 声明
軍学共同・軍産学複合体づくりにNOといえる大学の自治と自由を
 
1、日本学術会議が1950年と1967年に軍事研究に反対する声明を出したことは、戦前の大学・研究機関が軍事研究に深く関わり、日本国民のみならずアジアや世界の人々に未曾有の惨禍をもたらしたことへの深い反省に立ってのことである。戦後の学術研究に携わるものの重要な決意として、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない」(1950 年総会)、「軍事目的のための科学研究を行わない」(1967 年総会)としたのである。この精神を、深く受け止め、軍事研究禁止を再確認している大学も、東北大、東大、新潟大、信州大、京大、広島大、琉球大など少なくない。
 
2、しかし、これに対して、上記声明は「周辺環境が変わって」「時代に合わない」、「自衛のための研究までは否定されない」などと大西隆日本学術会議会長(豊橋技術科学大学長)から見直しが提起され、本年5月20 日に設置された日本学術会議の検討委員会で討議がなされている。そこでは、声明の精神の堅持を求める声が多いとはいえ、見直しを求める意見も少なくない。見直しの理由として唱えられるのが「デュアルユース」論、すなわち、科学の成果は民生用にも軍事用にも使えるという両義性をもつから、軍関係からの予算であっても軍事研究とは限らないというものである。
 
3、2015年度から始まった防衛省の「安全保障技術研究推進制度」は、「デュアルユース」論に立ち、研究者の軍事研究に対する抵抗感を軽減させ、運営費交付金や助成金の削減等による研究費の窮乏化に直面している研究者の応募を誘導している。そこでは、防衛装備品に応用できる最先端研究に資金を配分するとして、2015年度は、3億円(109件応募、採択9件、内大学4件)、2016年度は、6億円(44件応募、採択10件、内大学5件)、さらに、2017年度は18倍の110億円を概算要求するにいたっている。
 
4、加えて、2016年度からの「第五期科学技術基本計画」は、防衛関連技術の研究開発推進を盛り込み、経団連は「防衛産業政策の実行に向けた提言」(2015年9 月)を出し、大学が「安全保障に貢献する研究開発に積極的に取り組むこと」や「研究推進制度」の拡充を求めている。私たちは軍事大国化をめざす政策の一環としての「安全保障技術研究推進制度」に強い疑念を表明する。
 
5、こうした狙いへの全国的な反対の声が高まり応募が減る中で、狙いすましたように北大大学院工学研究院の流体力学分野の研究課題が2016年度に採択された。これは北海道内初、旧帝大の中でも初めてである。問題は北大執行部が軍学共同容認に舵を切ったことである。この重大な大学政策の転換に対して、大学構成員に諮ることなく、トップダウン方式で決定されたことに、私たちは、強く抗議し、猛省を求めるものである。
 
6、私たちは、あらためて訴えたい。軍事研究の根幹は、軍事産業ないし軍事部門からの財源に依拠することであり、その事自体、日本国憲法の第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)、第23条(学問の自由)の精神に違反することである。集団的自衛権行使容認の閣議決定以降に、防衛省が大手を振って競争的資金提供を制度化し、それに大学、研究機関、企業が応募するよう勧奨することは、大学等を戦争推進体制に巻き込むことであり、断じて容認できない。私たちは、さらに訴えたい。軍事研究は、秘密保護を伴い、大学の自治、学問・科学研究の自由を奪うものである。軍事研究は、科学者の良心を曇らせ、人間性を破壊するものである。研究費削減の中で、研究者個人、部局、大学に、軍事研究の応募を迫る政策に私たちは反対する。大学の研究者が良心にしたがい、自由な教育・研究を行うためにも、私たちは「軍学共同・軍産学複合体づくりにNO」と強く表明する。
 
2016年9月26日
 
集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に反対する北海道の大学・高専関係者有志アピール運動をすすめる会
 
【呼びかけ人共同代表】唐渡興宣・北海道大学名誉教授(経済学)/姉崎洋一・北海道大学名誉教授(教育学)/荒木肇・北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授(農業生物学)/大屋定晴・北海学園大学経済学部教授(社会経済学)/加藤幾芳・北海道大学名誉教授(原子核物理学)/笹谷春美・北海道大学名誉教授(社会学)/山口博教・北海学園大学経済学部特任教授(経済学)